カスタマーサポートやオンライン営業を自動で行なってくれるチャットボット。多くのWebサービスやECサイト等で目にするチャットボットですが、いざ自社で作ってみる場合、どうすればいいかわかりませんよね。
そこで記事では、「チャットボットを自作で作る方法」と題して、チャットボットを作る手法や一般的なプロセスをまとめてお伝えします。
この記事は、開発経験の浅い方向けの情報です。チャットボット開発が初めての人はぜひ一度目を通されてみてください!
作る前に知っておきたいチャットボットの種類
チャットボットの作り方を解説する前に、そもそもチャットボットにはどんな種類があるのかを整理しておきましょう。
自社では、どの種類のチャットボットを作るべきなのか間違えないためにも重要なチェック内容ですよ。
ルールベース型チャットボット
ルールベース型チャットボットは、事前に設定されたルールやシナリオに基づいて動作するシンプルなシステムです。特定のキーワードやフレーズをトリガーとして、決まった応答を返します。
例えば、「営業時間は何時ですか?」という質問には「当社の営業時間は9:00から18:00です。」といった定型文で応答します。
ルールベース型チャットボットは、導入が比較的容易であり、特定の用途や定型的な質問への回答に向いています。逆に、回答を予測しにくい自然な会話文や会話のニュアンスを読み解くことはほぼ不可能です。
AI(人工知能)型チャットボット
AIチャットボットは、人工知能(AI)と自然言語処理(NLP)を用いることで、まるで生身の人間と会話しているようなコミュニケーション体験を届けられるチャットボットです。
「人工知能(AI)」技術であるため、実装後も日々の会話データを収集・学習し続け、会話の質を自動で向上させていくことができます。
しかし、人と会話しているかのようなレベルまで精度を高めるには、かなり膨大な会話データと時間が必要です。実装初期は的を得ない返答をしてしまうリスクもあります。
ハイブリッド型チャットボット
ハイブリッド型チャットボットは、ルールベース型とAI(人工知能)型を両方組み合わせたチャットボットです。
ルールベース型の事前に設定したシナリオでカバーできる質問にはシナリオから返答し、その枠から外れた質問はAI型によって返答しカバーします。
どちらもの良さを合わせ持つハイブリッドなチャットボットなので、上手く活用するとより満足度の高いコミュニケーションをユーザーに提供することができます。
とはいえ、AI技術を組み込んでいるため、高い満足度まで精度を上げるにはやはり時間はかかるため、長い目で見た運用が必要となるでしょう。
チャットボットを作る前の要件面の確認ポイント
チャットボットの作り方の具体的な説明に入る前に、「どんなチャットボットを作るべきなのか」という要件を固めておかなくてはなりません。
ここでは、チャットボットを作る前の要件面の確認ポイントをお伝えします。
チャットボットで解決したいことはなにか
まずは「チャットボットで解決したい課題はなにか」を整理しましょう。問い合わせ対応の自動化やオンライン営業、社内窓口対応の効率化などいくつかに分かれるはずです。
どのようなシチュエーションにおいて、チャットボットを導入したいのかクリアにしておきます。
どんな悩み・課題を持ったユーザーが利用しそうか
チャットボットを利用するユーザー像を明確にしておきましょう。どのような属性のどのような悩み・課題をもった人から質問が投げかけられるのかなどです。
コミュニケーションを考える上では、ターゲットの見極め・明確化がまずは出発点となりますので、イメージを明確にしておきます。
どんな返答や会話が求められるか
目的やターゲットが定まったら、次にチャットボットではどんな会話が求められるのかを確認します。
限られた定型的な質問と返答でよいのか、それとも自然な会話文への柔軟な返答が求められるのかなどです。
前者であれば、ルールベース型チャットボットが適しており、実装時には質問・返答のシナリオを洗い出し整理しておく必要があります。
後者であれば、AI(人工知能)型チャットボットが適しており、テスト段階でなるべく多くの学習データが必要となります。
どれくらいの予算内で開発したいのか
目的に沿っていれば、どれだけでも予算をかけてよいかというとそんなことはありません。開発時に必要な初期費用(イニシャルコスト)と毎月の運用費用(ランニングコスト)の上限の目途を決めておきましょう。
100万円単位で予算をかければ、それだけ大規模で自社用にカスタマイズできるチャットボットが開発可能ですが、初期費用をかけず毎月1万円~からチャットボットツールを活用することもできます。
柔軟な仕様・カスタマイズ性が求められるのか
サブスクリプションサービスのチャットボット開発ツールを利用して開発すると、エンジニアリング経験がない方でもチャットボットを導入することができます。
これらのチャットボット開発ツールは多く存在し、どれもそれぞれ便利ではありますが、社外のベンダーが開発したツールであるため、導入後に自社独自にカスタマイズするのには限界があります。
一方で、自社開発やAPI/ライブラリを活用しチャットボットを構築する場合は、チャットボット開発ツールと比べると柔軟な仕様で独自のツールとして構築が可能です。
チャットボットを作る3つの方法
では、チャットボットを作る方法には、どのようなやり方があるのでしょうか。
ここでは、「開発ツールを活用して作る」「ライブラリやAPIを活用して作る」の3つの方法に分けて解説します。
開発ツールを活用して作る
開発ツールを使えば、プログラミング初心者でも、ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作でチャットボットを作ることができます。
開発の知識や経験がなくても始められるため、手軽にチャットボットを導入したい時におすすめの手法です。
一方で各ツールの元の仕様は変更できないため、ツールの制約により、完全なカスタマイズは困難となります。また、どのツールも利用料金が毎月かかる点は事前に抑えておきましょう。
代表的な開発ツールには、ルールベース型の「ManyChat」、同じくルールベース型の「Chatfuel」、AI型の「Google Dialogflow」「Azure Bot Service」などがあります。
ライブラリやAPIを活用して作る
ライブラリやAPIを使うことで、柔軟な要件のチャットボットを開発することができ、自社独自の要件にも対応可能となります。
ライブラリとは、よく使う汎用的な機能やコードを集めた再利用可能なプログラムのこと。APIとは、異なるアプリケーション同士のやりとりを繋ぐ「窓口」のようなものです。
これらのライブラリやAPIを活用することで、ゼロから開発するよりもスピード感をもって開発を進めることができます。
しかし、当然ではありますが、ライブラリやAPIを駆使してチャットボットを開発するには、プログラミングスキルが一定以上求められますので、誰しもが取れる手法というわけではありません。
代表的なAI型のライブラリには、「Chatter Bot」や「GiNZA」。ハイブリッド型のフレームワークには、「Rasa」や「Microsoft Bot Framework」があります。
チャットボットの開発プロセス
チャットボットを開発するには、いくつかの重要なステップがあります。それぞれのステップをしっかりと踏むことで、効果的で機能的なチャットボットを構築することができます。
以下に、開発ツールでのチャットボットの開発プロセスです。
目的の設定と要件定義
最初に、チャットボットを導入する目的を明確に設定します。例えば、カスタマーサポートの効率化・販売促進・内部業務の自動化などです。
目的が明確になると、チャットボットに求められる具体的な機能や要件も定義できます。これにより、開発の方向性が決まり、適切な設計が可能になります。
対話フローの設計(FAQの設計)
次に、ユーザーとの対話フローを設計します。これは、ユーザーがチャットボットとどのようにやり取りするかを決定する重要なステップです。
対話フローの設計では、ユーザーが入力するであろう質問やリクエストに対する適切な応答を考え、FAQリストを作成します。これにより、ユーザー体験を向上させ、ボットの有効性を高めることができます。
開発ツールとプラットフォームの選定
チャットボットの開発には、適切なツールとプラットフォームの選定が重要です。GoogleのDialogflow、MicrosoftのBot Framework、IBMのWatson Assistantなどの開発ツールがあります。
これらのツールは、自然言語処理(NLP)機能を提供し、ユーザーの入力を理解して適切な応答を生成するのに役立ちます。また、チャットボットを展開するプラットフォーム(Webサイト、Facebook Messenger、LINEなど)も選定します。
直感的な操作でチャットボットを開発する
開発ツールを使えば、ドラッグ&ドロップのような直感的な操作でチャットボットを構築できます。どの開発ツールを利用するかで具体的な設定方法は異なりますが、管理画面上で返答の流れ・分岐を繋いでいくようなかたちで操作するケースがよく見られます。
運用テスト
一通り構築し終えたら、チャットボットの動作確認を行います。シミュレーション環境でテストを実施し、対話フローや応答の正確性を確認します。バグや問題が発見された場合は、迅速に修正します。また、テストユーザーからフィードバックを集め、改善点を洗い出すこともあります。
本番反映の準備
テストが完了し、全ての問題が解決されたら、本番環境への反映準備を行います。各関係者に最終確認し、本番環境へと反映します。
ユーザーデータの収集と継続的なPDCA
本番運用が開始された後も、チャットボットのパフォーマンスを継続的にモニタリングし、ユーザーデータを収集します。このデータを分析することで、ユーザーのニーズや傾向を把握し、チャットボットの改善に役立てます。定期的に新しい機能を追加し、応答の精度を向上させることで、常に最適なユーザー体験を提供します。
以上のステップを踏むことで、ユーザーにとって効果的で有益なチャットボットを開発することができます。一つひとつのプロセスを軽視せず、着実にステップを進める意識が重要です。
チャットボット導入にかかる期間
開発ツールでチャットボットを構築・導入する際のおよその期間は、1~3か月ほどかかると見ておくとよいでしょう。
導入企業側のさまざまな事情によって差はありますが、平均的なスケジュールとして見ておいてください。
開発ツールの選定(1〜2週間)
自社のニーズに合った開発ツールを選定するために、複数のツールを比較検討します。
初期設定とカスタマイズ(2〜4週間)
選定したツールの初期設定やカスタマイズを行います。この段階では、対話フローの設計やFAQの設定、インターフェースの調整などを行います。
テストとフィードバック(2〜4週間)
設定が完了したチャットボットをテストし、実際の運用に耐えうるかを確認します。テスト結果に基づいて調整を行い、必要な改善を加えます。
本番運用開始(1週間)
全ての準備が整ったら、本番環境での運用を開始します。初期段階では継続的にモニタリングを行い、必要に応じて迅速に対応します。
まとめ
チャットボット開発は高いエンジニアリング力を持っている方であれば、ライブラリやAPIを活用し、独自の仕様で開発することができます。
しかし、チャットボットの実装が求められるカスタマーサポートやマーケティング畑の人には、なかなか豊富な開発経験はありませんよね。
そんな方でも開発ツールを使えば、直感的な操作でチャットボットを構築していくことが可能です。
弊社が提供している軽量なCMS「
uniCMS」にも、どなたでも平易に設定できるチャットボット機能が搭載されています。
チャットボットはイチから構築しようとするのではなく、ぜひ開発ツールを積極的に活用されることをおすすめします。